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さても、此処アドロードの街の外れ、比較的に裕福な所得層の住まう界隈に。
一つ。小さいながら、それなりの立派さと風情の良い佇まいを持った屋敷がある。
清楚な庭、立派な鉄門扉を手入れをする多様な使用人たち。
しかし。
おかしな事に多様を通り越して、その半数ほどがどうやら、ピクシーである。
人間向けの住居の隅々を、せっせとピクシーが手入れしている。
どころか。よくよく見れば。
住まい、行き交う者の8割が、ピクシーである。
寝室では人間サイズの寝床にピクシーサイズの枕が並び、食堂では立派な人間用の食卓と棚の上にはピクシーサイズの食器、それも飲み物と茶菓子程度しか食さないにも関わらず、うやうやしく和洋中の一式が全て揃っている。書斎には大きな本棚に親子のように2種、通常サイズとピクシーサイズの書籍がそれぞれに並び、机には人間サイズの椅子と別に、インク瓶に並んでピクシーサイズのソファや台が乗っかっている。
つまるところ、このちぐはぐな屋敷の持ち主自体ピクシーなのである。
単に人間の貴族や商人の持ち物なら、やや下級といった程度の屋敷だが。
妖精の住まいとなれば、御殿と言ってありあまるのではないだろうか。ただし、
規模的にあまりにも不便で無駄なのでは。とツッコまれても仕方がない程に、
人型種族仕様ではあるが。
持ち主の名は、マルグル=サルバドール。および名義はサルバドール商会。
妖精のくせに貿易をはじめとする商売を営み、人間社会に近付くべく、
こんな屋敷にこんな住まい方をするピクシーとその一族である。
…その、比較的には小規模だが、ピクシーにはどう考えても大きすぎる
書斎机の真ん中に。わざわざしつらえたであろうミニチュア椅子も無視して、
器用に大きな万年筆で書類に次々サインをしていく、ロココ正装の妖精が一人。
触覚は櫛型、翅は三つ分かれと異様ながら、撫で付けた茜色の髪は凛々しい。
名はエドガー。このサルバドール家の跡継ぎにして二番目の長男である。
「―――ちょ、兄さん!!エド兄さんいる!!!!?」
そこにまた、壁を無視して通過し、大声を上げて転がり込んできたピクシーが一人。
着物姿の。
ここからは、会話のみを拾っていくに留めておこう。―――
『瑠璃!屋敷内では非実体化するなと言っとるだろう、家では家のルールを守れ!!』
「んなこと言ってる場合じゃないでしょ、どういう事なのこれ!?」
『そんな事とはなんだ!?お前は我が一族の経営の本質を何だと思っt』
「中身。コレの中身!!父さん阿呆になったんじゃないよね!!?」
『はぁ? お前な、世界一素晴らしい阿呆の父上に何を今更…じゃない。
なんだその言い草は。そもそも何をそう大騒ぎしとるんだ?その連絡書がどうした。
単に、これからの復興事業と、業務の展開についての連絡だろうが。
街の建て直しだけではない、帝国の統制下に入るのだからな。資本形態の変更
だけでは間に合わん、新規事業も立ち上げて手を出さねば―――』
「いや。いやいやいや!?…自治権が撤回されたんだよ。関税も交易規制も全っ部、
重くなるどころじゃ…自由律なんてほっとんどなくなるのに!?普通逆でしょ!!!?」
『それでもだ。やるんだそうだ、街の為にな。父上が決めたのなら我ら一族もろとも絶対だ』
「ウッソぉ…。現に交易ルートから降りる商会も、街自体から撤退する商売人もどんだけ
いると思ってんの?ウチだって…今更、撤退まではしなくても縮小くらいはするもんだと
てっきり…」
『その撤退した商会の代わりに、穴埋めでウチが事業拡大するんだろうが。よく読め。
さすがに従業員の8割がピクシーでは、引き受けられる仕事はごく一部だがな。
商人ギルドにも掛け合って、街の機能維持のため出来る限りフォローするよう
声をかけている。
まぁ。せいぜい、現資産の数割を投資する程度だ』
「…いや、程度…って…なんっで、そこまで…ぇ…?」
『ふむ?…正直に言うとだな。
俺もそう思った。父上も、縮小を考えていなかった訳でもないらしい』
「じゃ、なんで!ウチはギルドに依存はしてたって、さすがになんの義理があって」
『なんの!?お前な、まだわかっとらんのか?』
「いやわかってないから聞いてんでしょお!?」
『お前のせいだろうが』
「 …はい?」
『だから。引けなくなったんだとも、お前と、それからあの困った母さんのせいでだ』
「何。それ、ちょっと。どういう…」
『母さんもお前も…―――どれだけこの街と、人に世話になった』
「。」
『特に、お前だ。冒険者業だけじゃない、いたる所に顔を突っ込んで!
やれ武闘大会で名を上げたかと思えば、今度はそれに引っ張られて、柄でもない
悪党退治に駆けずり回る。しょっちゅう傷だらけになって、時々はぶっ倒れて運ばれて
帰るようになる。それも、やめろと怒鳴りたくてもだな。お前を叱らんでやってくれ、
冒険者は皆こうして懸命なんだ、と。運んできた冒険者ギルドの連中やら、同族の
仲間やらに念を押されまくる始末だ』
「…」
『こないだも、有志を率いて街に出たあげく、自慢の算盤ごと粉々で担ぎ込まれたろうが。
仮にも家から出たとはいえ一族直子の末子が、これだけ人前でやらかしてるのにだな。
肝心の家元が、縮小やら撤退なんぞ出来るわけがあるか!?
格好がつかん以前に。申し訳が立たんだろう、お前の仲間にも、お前自身にもだ。
…どうだ、それともお前は家のために、街を見捨てたかったか?それならあれだけ
傷だらけになぞなる訳は無いだろうからだな。結局、一族丸ごと引けんのだろうが!』
「…そんっなん…全く、聞いて、ないけど…」
『だろうとも。そういう主張をだな。特に母さんがそれはもう、声高にまくし立てた。
そして父上を筆頭にして俺達兄弟を含めた一族全員が、それも尤もだと結論づけた。
やれる所までやる。そういう事にもう決議が下ったんでな。一人の異議も出んかったぞ』
「ば…っか、じゃ…ないの!?…だって」
『経営に直接関与しとる訳でもない、ヒヨッコの放蕩息子の為に。と思うか?』
「……・・・正直。」
『全く、その通りだとも!安心しておけ。お前に家業の責任を負わしてやる気なぞ、
望まない限りは これまでもこれからも、一切無い。
お前が自動で背負うのは、今まで通りサルバドールの名と血筋と、末子としての
自由だけで充分だ。それ以上は自分で決めて自前で背負え。あとは知らん』
「…
…… ・・・あのー…」
『なんだ』
「 どんっだけ。甘いの、それ…」
『甘いとも!!大甘の甘っ甘だ。可愛い弟の分際で文句なぞ言わせんからな!!』
「…」
『悔しかったら肩を並べられる程度に、一旗挙げてから来い。200年はかかるだろうが?』
「……あのさ」
『なんだ。まだあるのか』
「…あの、さぁ…」
『言いたい事があるならさっさと言わんか』
「…
オイラさー…―――家をさ。裏切ろうとした事、あるよ」
『 。』
「…隊が、一緒に回ってきた時のさ、交易の集荷と収益。
あれさ。オイラ、全部パーにしようと」
『あぁ。それなら大鷲の頭領からとうに聞いてる』
「!!」
『殺された人員の、仇を追う気だったらしいな。隊の仲間と共に。お前こそ阿呆を言え、
それの何が裏切りだ』
「いや…だって、そうなってたら」
『まぁ、小さいが事業が一つ、丸々潰れていたろうな。しかしそうはならんかった。
大鷲はちゃんと持ってきてくれたぞ、成果もお前も。充分な元手だった』
「結果が良ければいいって問題じゃ…」
『当たり前だ。お前は一度、実の家族の生計よりも、10年を共にした仲間の方を
選ぶ決断をした。しかしその後、ちゃんと家の為に顔を出し、働きに戻ってきた。
それ以上に何の説明が必要だ?
父上はな。喜んでいたぞ。お前に全てを賭けたいと思える役割と、仲間の出来た事に』
「…」
『わかったか。つまらん責任や罪悪なんぞ感じる暇があったら、街の復興が軌道に
乗り次第、さっさと隊に戻れよ。母さんもどうにか帰ってきたしな。
―――お前の本当の仕事は、此処にはないぞ』
「……・・・あー…わぁ…なんか…
すっごい、腹、立ってきた…」
『…何だと?』
「あー!もー!!無駄に気負ってたオイラが完全に馬鹿みたいじゃんか!?
なに、つまり、今まで通りでいろってか!あーそうですか!そうですか!もー!!」
『だからそう言っとるだろうが。阿呆と。そもそもだな?お前に心配されるほど貧弱な
経営なぞしとらん。父上が創業してもう100年だぞ、この家の地盤を甘く見るな、たわけ』
「…そう思ってました。そう思ってたから、いっそ交易口の一つぐらいブッ潰れたって
構うもんかって、そう考えてた時がオイラに一瞬でもありました!その結果がコレだよ!
悪かったな!!」
『はっはっはー。白状しおったな。何度でも言ってやろう。たわけ。たわけ。たーわーけー』
「きいいいいそれでも次期経営者か!!父さんといい兄さん達といい、こんの
博打好き一家!!じゃあもうホント知らないかんね!?いいんだね!?
ここに書いてある部署全部、いざとなったら街の為に動かしていんだね!?」
『おお。ただしその場合、指揮はお前が取れよ。現場を任せられる手までは余っとらん』
「言われなくてもわかってらぁ!!―――それから、父さんに言っといて!!!!
絶っっっ対 に 利子つけて 返す!!!!」
『ほう、利子とは、具体的に何をだ』
「出世してから考える!!!!」
『わはははは。頼もしい事だ、伝えておこう』
―――こんなやりとりのこだまする屋敷を見上げて、使用人の一人は思うらしい。
今日もあの一家はいつも通りだと。
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途中から色々放棄している。SSなんてかけない。
何か大層な会話に聞こえるかもしれませんが。そんな力は別にありません。
せいぜい地方スーパーのチェーン店経営程度の規模イメージ。この一族。
でも具体的には決めてない。ともかくそのうち、街のあちこちでカナヅチやら
支援物資もってうろうろやってるピクシーが増えるような気がする程度でしょう。
長男エドガーは、某修造並の暑苦しい情熱をエンジンに動く男。次期経営者。
頑固さは母親譲り、図太くて感性のぶっ飛んだ神経は父親譲り。
ただ父の事は尊敬しているが、母とは似たもの親子のせいか仲が悪いというか
何かと怒号飛び交う喧嘩が耐えない。そのくせ家族のチームワークは良い。
瑠璃丸はジーニアが殺された時に、隊に支障きたしてでもペドロ追っかけよう、っつってた
メンバーに自分の実家が一番被害を被るにもかかわらず、賛同していた。
瑠璃以外にも、そういう外部との関係とか、本物の家族や故郷と支障が出るような人員はいて
そういったもろもろ含めた崩壊を防ぐために、シシは一人で全部やると問答無用で決めた。
シシの 「家族が家族でなくなるくらいなら、自分が全て引き受ける」 は、
自分の家族であるキャラバン本体も、瑠璃の家のようなその先の家族までも含めた言葉。
シシやペドロがまだアドロードに滞在している事を、瑠璃は知らない。
てっきり移動している相手を追いかけて、とっくに街から出ているものだと思っている。
瑠璃が街に居る事の方は、武闘大会の<名声>で必然的に知れわたってるが。
シシは瑠璃が実家があるから帰ってきているとわかっているので、一人でって決めた以上
巻き込みたくないので声かけない。ペドロも自分を追っかけて街にきた訳じゃないだろうと
わかっているので、詮索はしてない。動向はちょっと気にしてやや情報収集してる。
瑠璃がもし、2人ともあるいはどちらかが街に居ると知ったら、即効で首突っ込もうと
するだろうけれど。でも結局、出来る事は何ひとつ無いだろうと思う。
HP:
趣味:
自己紹介:
【ペドロ、カミラ、ガナム】
過去使用・保留PC
【シシ、スイ、瑠璃丸】
関西圏の某芸大でデザインを学びつつ、TRPGサークルに所属。卒業後はデザイナーに試用就職のち、現在は観光業に従事しています。
※職業上、土日祝が繁忙かつ盆正月がなく、現在AA出現頻度が激減しています。幽霊PL状態ですがご了承下さい。
●現在の興味(雑食・悪食)
ワールドミュージックや民族音楽
(ブルガリアン・ポリフォニーなど宗教合唱、北欧トラッド、オセアニアや欧州~中東~アジア諸国の土着系音楽)
各国の文化諸宗教。民族原初の神話伝説その他。
漫画・アニメ・ゲームは言うまでもなし。あとなぜか宝塚歌劇団。
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